こんにちは、しめじです。
先日、第36回全国硬筆コンクールの結果が出たということでご報告をさせていただきました。

今回は、全書会のホームページにネット展が公開され、受賞者の作品が見れるようになったのでその敗因について考察してみようと思います。
審査方法・審査基準を再確認
審査方法
今回のコンクールは新型コロナウイルスの影響から「審査アプリ」なるものを導入し、オンライン審査にて審査を実施したとされています。確かに、作品を見てみると結構細い線まで見ることができる解像度で綺麗な画像でした。全作品がこの審査方法で審査されているので、もちろんここに異論はありません。
審査基準
審査基準について改めて確認していきたいと思います。全書会ホームページによると、硬筆コンクールの審査基準は以下のようになっています。
20) 審査基準について
- 誤字脱字がないか
- 筆順正しく丁寧に書かれているか
- 文字の中心が揃っているか
- とめ・はね・はらいに留意し、基本点画(縦画・横画・点・折れ・払い・はね・まがり・そりの書き方等も含む)に注意して正しく書かれているか
- 点画の接し方、交わり方、方向などの習熟度
- 様々な部首の書き方と文字の組み合わせ方の習熟度
- 文字の形、大きさ、中心の取り方、配列、漢字と仮名及び作品全体のバランスなどの習熟度(余白は重要なポイント)
- 大小の漢字及び仮名文字を理解して書いているか(こ・と・め・る等)
- 硬筆用具の特性の活かし方、毛筆における筆づかいの習熟度
- 作品の取り扱い方(汚れ・破れ・硬筆作品の折れなど)
- 学年・氏名がしっかり書けているか
- 出品規定に沿った作品であるか
- 手本などを写して書いていないか ー以下高校生以上を対象ー
- 筆記用具の特性の活かし方
- 本文と自筆署名のバランス及び余白
- 作品全体の構成
【引用:全書会−実施要項】
16の項目に分かれて細かく審査基準が設けられていますが、よくよく見てみると至ってシンプルな審査基準であると思います。
内容を分類してみると、以下のように分けられるかと思われます。
- そもそも作品として扱って問題がないか(誤字脱字がないか、出品規定に沿った作品であるかなど)
- 硬筆のスキル(文字の中心が揃っているか、基本点画に注意して正しく書かれているかなど)
- 余白や構成(本文と自筆署名のバランス及び余白、作品全体の構成)
余白や構成については16項目中の2項目ということを頭の片隅に置いておいてください。
なお予め断っておきますと、僕の作品は誤字脱字、汚れ、手本の写しなどは一切なく、作品として受け入れられているはずです。
作品全体の感想と他作品との差異
全体の感想
ではまず、今回の一般の部の全体の作品の感想です。全体を見た感じだと行書、草書は比較的まばらに選ばれており、例年気になっていた行書・草書の審査上の差異はそれほど気にしなくて良いのかなと思いました(そうは言っても草書の方が多いですが)。
他作品との差異
次に、「敗因」ということなので、僕の受賞した「日本硬筆準大賞」以上の賞に焦点を当てて考察していきたいと思います。
ネット展で全ての僕以上の作品を拝見し、まずはどこが他の作品と違うのかを探しました。すると、1つ大きな違いに気づきました。それは、1行目と3行目の終わりです。

こちらが今回僕の書いた作品です。1行目の「ミラボー橋の下〜」の行よりも3行目の「なぜこうも〜」の行の方が上で終わっています。ですが、僕以上の賞20作品以上で僕と同じレイアウトだったのは2名だけで、他の方は全て3行目の方が1行目と同じかその下で終わるようになっていました。
ここで1つの疑問です。1行目と3行目の文字数を数えてみると、どちらも「13文字」ということがわかります。しかし1行目は「セーヌが〜」の上に1文字分のスペースがあるので、実質1行目の方が文字数は多くなります。すると、3行目の方が上で終わるのは自然だと僕は思います。
とはいえ、文字の大きさは漢字と平仮名で違うし、同じ平仮名でも違うじゃないか、という意見もあるかと思います。しかしよく見てみると、1行目は漢字が3文字あるのに対し、3行目は漢字が2文字で「思・出」どちらもそれほど縦が長い漢字ではありません。
しかも3行目には小さく書くべき平仮名「こ・る」の2文字も含まれています(これは審査基準にも入っています)。よって、3行目の方が上で終わるのはやはり自然であると考えられます。
にもかかわらず、僕より上の賞のほとんどが3行目の方が下に来ている作品でした。文字の字形や線質の違いは当然あれ、全体的な構成やバランスを見た時、他の大きな違いを探しても見あたりませんでした。
参考手本を見てみると、確かに3行目の方が下に来ていました。これを考えると、参考手本に近い方が評価されるのかなと思ってしまいます。くれぐれも言っておきますが、運営・審査について異論を唱えたいのではありません。極めて客観的な第三者的な視点からの考察をしているつもりです。
審査講評から改善点をみる
次に審査講評について見ていきたいと思います。一般の部を審査されていた方で、全体の作品に対する改善点を述べていた意見を抜粋します。
- 良い字形でしたが、中心がずれて、まとまりをかいた作品が数点見られました。
- 字形は、整っていましたが、筆圧の強弱が欲しい作品も見られました。
- 行書、草書作品で文字の流れが、滑らかでない作品が見られました。
- 硬筆作品の線の太さはどこまで許容されるか
- 毛筆のような線を硬筆用具を用いて書くということは、その目的(硬筆用具の特性を生かして線の強弱をつけること)から外れるということで字形はよくできているが減点された作品がありました
この審査講評を見て、改めて僕の作品を見ていきます。参考のため、中心線を引いてみました。


中心線を引いた方を見ると「喜びは〜」の列で少し右に流れているかと思いますが、それ以外は中心から大きくずれてはいないかと思います。しかし僕以上の賞の中でも、隣の文字とぶつかりそうになったりしていたり、明らかに中心線からずれたりしている作品もあります。
その他、今回僕は少なくとも毛筆のようなペンではなく、uniのPiNという硬筆ペンを使っています。ですので、僕の作品は硬筆用具で減点されたという作品には入らないはずです。
ただ、文字の流れの滑らかさは確かに不十分かと思います。また、筆圧の強弱についても確かに少なかったのかもしれません。
考察まとめ
以上のことから、今回の僕の敗因及び改善点を考察してみると以下の点になるかと思います。
- 1行目と3行目の長さ(及びそれに伴う全体のバランス)
- 文字の流れの滑らかさ
- 筆圧の強弱
②、③については全くその通りで納得しています。ですが①が本当に減点の理由であるなら納得はできるものではありません。13文字と14文字(スペース含む)で漢字の量も14文字の方が多いのに、なぜ3行目が下に来るのでしょうか。
これが審査基準の2つである「余白や構成」の部分で大幅の減点となっているのでしょうか。こればかりはわかりません。
最後に

今回の審査については、正直多くの疑問が残ります。自分の字が綺麗だと棚に上げるつもりはありませんが、本当に厳正な審査の上、団体応募・個人応募の境なく正当な審査となっているのでしょうか。参考手本に近い作品が評価されてはいないでしょうか。
余白やバランスが重要なことは重々承知していますが、それにしても「文字を正しく整えて丁寧に書く」という硬筆コンクールの本来の大きな目的は本当に見られているのでしょうか。
もちろん、すべて僕の実力不足なら何も異論はありません。大好きな硬筆コンクールなので、そんなことはないと信じています。
でももし審査基準に入っていない部分で審査されているとしたら、それはとても悲しいことです。来年以降の出品もしないかもしれません。そう思わざるを得ない今回の結果だったかと思います。
今回は以上です。